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行政施策におけるスラッジと

倫理的課題

行政施策においても、意図せず人々の行動を阻害する「スラッジ(ぬかるみ)」が存在することが指摘されています。特に、行政手続きの煩雑さや不透明なルールが、市民にとって大きな負担となるケースがあります。

行政施策におけるスラッジの問題点

豪州ニューサウスウェールズ州(NSW)の行動インサイトユニット(BIU)では、行政手続きの「時間税」について分析し、その削減に向けたツールキットを作成しました。時間税とは、不要な手続きや非効率な設計によって市民が余計な時間や労力を強いられることを指します。BIUの報告では、行政手続きにおけるスラッジの主な要因として、以下の点が挙げられています。

  • 古い情報や矛盾した説明:最新の情報が提供されず、市民が混乱する
  • 複雑な言葉や専門用語の使用:分かりにくい表現が意思決定を妨げる
  • 使いにくいウェブサイト:必要な情報にたどり着きにくい構造
  • 長い手続きや不要な情報の要求:不要な書類提出や過剰なプロセスが負担となる
  • プリントやスキャンが必要な書類:デジタル化が進む中で、物理的な書類提出が求められる
  • 説明のない長い待ち時間:手続きが不透明で、進捗が分からない
  • 不安を煽る設計:心理的負担を与える表現やデザインの採用
  • 多言語対応の不足:英語以外の言語での情報提供が不十分
  • オンラインまたは対面のみの限定手続き:柔軟な対応が求められる中で、選択肢が限られている

このようなスラッジは、行政サービスの効率性や市民の満足度を低下させるだけでなく、特定の層に対して不公平な障壁を生む可能性があります。そのため、行政手続きの設計においては、ユーザー目線に立ち、手続きを簡素化することが重要です。

EUの規制とスラッジの防止

EUでは、オンラインプラットフォームやAI技術の透明性と安全性を確保し、ユーザー保護を図るために デジタルサービス法(DSA) や AI規制法(AIA) が制定されています。

デジタルサービス法(DSA) は、オンラインプラットフォーム上での ダークパターンの使用を禁止 し、違反企業に対して 年間売上の最大6%の罰金 を科すことを定めています。

AI規制法(AIA) は、AIシステムの 透明性と説明責任を強化 し、ユーザーを 欺く手法を間接的に規制 することを目的としています。AIAでも重大な違反には DSAと同様に罰則 が適用されます。

これらの法規制は、デジタルサービスやAI技術が公正かつ安全に利用されることを促進するためのものであり、消費者保護の観点からも重要な施策となっています。

また、日本においても、広告であるにもかかわらず、その事実を隠して宣伝を行う「ステルスマーケティング」が 景品表示法 によって規制されるようになり、消費者が誤解を受けることのない市場環境の整備が進められています。す。