ゼロカーボンドライブ実証実験で行動変容の可能性を検証
環境省の委託事業として、株式会社サイバー創研と株式会社電力シェアリングは、EV(電気自動車)利用者を対象とした「ゼロカーボンドライブ(ゼロドラ)」実証実験を実施した。本実験では、EV充電時に発生するCO₂排出量を可視化し、その排出量を環境価値(J-クレジット)によってオフセットするサービスの利用促進を目的に、行動経済学のナッジを活用した効果検証を行った。

EVも充電方法によってCO₂排出量が変わる
EVは走行中にCO₂を排出しないため環境に優しい乗り物として知られている。しかし、充電に使用する電力の発電方法によってはCO₂が排出される。特に火力発電の割合が高い時間帯に充電した場合、間接的にCO₂排出を伴うことになる。そこで本実証では、参加者がスマートフォンの専用アプリに充電時間や充電量を記録すると、時間帯ごとの電力のCO₂排出係数をもとに充電によるCO₂排出量を自動計算。さらに、J-クレジットを活用して排出量をオフセットする「ゼロドラ化サービス」を利用できる仕組みを構築した。
4つの介入手法で効果を比較
実験は2025年10月9日から11月5日までの4週間実施された。一般のEV利用者347人を対象に、以下の4群へランダムに割り付けて比較した。
- 対照群:CO₂排出量とゼロドラ化率のみ表示
- 介入群1:ゼロドラ化率に応じてブロンズ・シルバー・ゴールドのステータスを表示
- 介入群2:利用料金の一部が環境保全団体へ寄付されることを表示
- 介入群3:協賛企業の広告を視聴すると無料でゼロドラ化できる仕組みを導入
また、国内のテスラユーザーコミュニティ(TOCJ)会員92人を対象とした別の比較実験も実施された。

「無料」が最も強い行動変容を生んだ
実験の結果、一般EV利用者では「広告視聴により無料でゼロドラ化できる」介入群3が最も高い効果を示した。ゼロドラ化サービスを一度以上利用した割合は介入群3で有意に高くなり、非再エネ充電に対するゼロドラ化率は81.6%、全体のゼロドラ化率は86.0%に達した。さらに、充電ごとのサービス利用回数率も81.7%となり、いずれも対照群を統計的に有意に上回った。一方で、ステータス表示や寄付訴求による効果は限定的であった。ただし、40代の参加者に限ると、ステータス表示や無料化施策がゼロドラ化率向上に有効であることも確認された。
EV利用者の脱炭素行動を後押しする新たな仕組みへ
今回の実証実験では、単にCO₂排出量を見える化するだけでなく、行動経済学のナッジを組み合わせることで、利用者の脱炭素行動を促進できる可能性が示された。特に「無料」というインセンティブは強力であり、ゼロドラ化サービスの利用拡大に有効であることが明らかになった。今後は、2026年度に本格化する分散型エネルギー活用やEVの社会実装に向け、こうした仕組みを発展させることで、EV利用者が自然に脱炭素行動を選択できる環境づくりが期待される。EVの普及だけでなく、「どのように充電するか」「どのように排出量を相殺するか」という新たな視点が、次世代の脱炭素社会の実現に向けた重要な鍵となりそうだ。