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行政組織の力をどう高めるか

ナッジを支える体制づくりの今

前回は、地方自治体がナッジを取り入れる上で直面している数々の課題を整理しました。では、そうした課題を乗り越えるために、どのような組織的な取り組みが進められているのでしょうか。

ナッジ・ユニットの立ち上げが各地で加速

近年、ナッジを専門的に推進する「ナッジ・ユニット」の設立が全国の自治体で広がりを見せています。中には、「ナッジ」を直接掲げた組織名ではなくとも、行動インサイトに基づく政策企画や実証を担う部門として、実質的に同様の機能を持つチームが立ち上がっています。

こうしたナッジ・ユニットは、単なる政策実行のためのチームではなく、組織全体の知見を蓄積し、職員の異動によって知識が失われることを防ぐ「知の受け皿」としても機能しています。日本の自治体では頻繁なローテーション人事が一般的ですが、ナッジ・ユニットがあることで、経験やノウハウを組織的に蓄積・活用する体制が少しずつ整いつつあります。

NGOとの連携が行政の硬直性を補完

また、自治体内部の柔軟性が限られている中で、外部のNGOやNPOと連携しながらナッジを進める動きも出てきています。こうした連携により、自治体単独では取り組みにくい先駆的なナッジ施策の企画や検証が可能になり、組織の壁を超えた新しい価値創出が期待されています。

都道府県レベルの橋渡し的役割

都道府県は、市町村に比べて相対的にリソースが充実しており、基礎自治体のキャパシティビルディングを後押しする存在としても重要です。実際、ナッジに関する研修や事例共有を通じて、市町村の組織的・人的能力の底上げを図る取り組みが進んでいます。加えて、国や都道府県が先進事例を奨励・評価・共有することで、全国的な水平展開も期待されています。

ナッジの普及状況を定量的に把握するために、研修実施数や参加自治体数といった客観的データを統計化していくことも、今後の推進には欠かせない視点です。

専門家との協働による施策設計の高度化

自治体内部だけではカバーしきれない分析・設計・検証のプロセスにおいては、行動経済学の研究者や実務に精通したコンサルタントといった外部の専門家と協働する動きが少しずつ広がりつつあります。こうした連携により、ナッジを単なるアイデアで終わらせず、質の高い行政施策として具現化するための支援が可能になりつつあります。