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交通・運輸政策へのナッジの内包 前半

日本の温室効果ガス排出量の11%が生活者の移動に伴うものであり、住まいの再エネ利用・省エネ促進と同様に、移動手段の見直しが必要不可欠です。本記事では、公共交通機関の利用やモダルシフトを促すナッジ手法を含む交通・運輸政策について解説します。

国土交通省は、R3年5月に閣議決定された第二次交通政策基本計画の中で、「地域が自らデザインする、持続可能で、多様かつ質の高いモビリティの実現」を目標に掲げています。

現状と課題

人口減少や高齢化を背景に、交通サービスの維持が困難な地域が増加しています。全国の約7割の一般路線バス事業者および地域鉄道事業者が赤字であり、交通産業の人手不足も深刻化しています。新型コロナウイルス感染症の影響で、旅客輸送需要が減少し、路線の廃止が進む「交通崩壊」が懸念されています。地域公共交通の空白地域が増加し、特に高齢者や身体的理由で自家用車を利用できない「交通弱者」のモビリティ確保が課題です。

交通崩壊を防止する行動インサイトの活用

地域モビリティの再構築には、従来型の商業手法に加え、公助・共助・自助を組み合わせた柔軟なアプローチが必要です。デジタル化や自動化、デジタル・トランスフォーメーション(DX)を活用し、供給者目線から利用者目線への転換が求められます。

ナッジ手法の具体例

公共交通機関・徒歩・自転車の利用促進
公共交通機関の利用を促進するために、デジタルサイネージやスマートフォンアプリを活用して利便性やコストの比較をわかりやすく示します。これにより、公共交通機関の利用のメリットを視覚的に伝え、利用者の行動変容を促します。
また、徒歩や自転車の利用を奨励するために、歩行者専用道路や自転車専用レーンの整備、地域イベントの開催が重要です。コミュニティ全体での取り組みが求められます。

環境意識の醸成
CO2排出量の見える化やエコポイント制度の導入により、移動手段の選択が環境に与える影響を実感させます。これにより、個人が環境に配慮した移動手段を選択する動機付けが強化されます。

地域特性に応じたナッジ施策
高齢者には、バリアフリー化の推進や特別な交通サービスの提供が有効です。安全かつ快適な移動環境を整えることが求められます。
一方、若年層には、デジタルツールを活用した交通手段の案内や、環境意識を高める教育プログラムが効果的です。学校や地域のコミュニティセンターでのワークショップが期待されます。

まとめ

交通政策にナッジを取り入れることで、住民の意識と行動を変え、公共交通機関の利用促進、徒歩や自転車の利用拡大、地域全体のモビリティ向上が実現します。持続可能な社会の実現に向けた一歩として、各地域の特性に応じた柔軟な施策が求められます。